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今回も焼抜きの説明の続きです。 焼抜きの説明は今回で完結です。
前回の記事
前回は焼抜き後の水漏れ箇所の鉄漆での処置をご紹介しました。 今回は最後の工程、色付けです。
釜や鉄瓶の表面には漆が塗ってありますが、前回の記事でもご説明したとおり、漆は高温になると劣化してしまいます。 800℃の高温で焼抜きされた釜は、水漏れのために詰めてあった鉄漆だけでなく、釜の表面の漆や色もはがれてしまいます。 そのため、焼抜き後には再度色付けをする必要があります。
色付けに使う漆。
左の黒い漆は、釜の内側に塗ります。 (今回はお客様のご要望により内側には漆を塗りませんでした。)
右側は、漆に弁柄(べんがら)という赤い顔料を加えたもの。 釜の外側に塗ります。
釜の外側に色を付けます。
190℃程度に温めた釜に、弁柄を加えた漆を刷毛で塗ります。
塗った漆がムラにならないよう、表面全体に均等にのばします。
稈心箒(みごほうき、藁を束ねた箒)に水を付け、釜を温めながら漆をのばします。
漆が均等にのびたら、約190℃で30分程度漆を乾かします。
漆が乾いたら、釜の外側の色味や艶を調整して仕上げます。
①稈心箒 ②水
③鉄漿(おはぐろ) 酢酸や酒に鉄片を長期間浸したもの。 表面にツヤを出すために使います。
④お茶、⑤タンニン酸 お茶やタンニン酸を刷きつけると、鉄と反応し黒い色に変化します。
⑥炭(黒色)、⑦弁柄(赤色)、⑧珪砂(白色) 修理前の色に近づけるよう、色味を微調整するために使います。
おはぐろとお茶と何度も刷きつけ、色味を調整しながら仕上げていきます。
着色後は表面を水でふき取ります。
修理が完了した田口釜。
釜の内側は、通常であれば黒い漆を塗り、煮え金を付けて仕上がりとなります。 今回は内側の漆、煮え金とも不要とのご要望でした。
型持ちには外からも鉄漆を塗りましたが、漆を乾燥させて色付けすると鉄漆はあまり目立ちません。
今回まで4回にわたり焼抜きの詳細をご紹介しました。
今後、締直しや底入替えについても詳細をご紹介していく予定です。