締直し-修理前後比較

茶の湯釜・鉄瓶の修理方法のご紹介

(2019年4月16日 追記)
ホームページ経由でいただいた修理事例の紹介記事を公開しました。
修理事例紹介

釜・鉄瓶の修理について

当工房では釜や鉄瓶といった鉄器や、茶道の風炉などの銅器の制作を手掛けていますが、鉄器・銅器の修理も行っています。
修理を頼みたいけどどこに頼めばいいのかわからない、いくらくらいかかるのか、ちゃんと直るのか不安という方が多くいらっしゃるようで、修理に関するご相談・お問合せをいただくことがよくあります。

そんな方たちに参考にしていただけるよう、鉄器・銅器の修理について当ブログで紹介していきたいと思います。

今回は鉄器の修理についてです。
釜・鉄瓶はどのように修理し、修理後はどんな状態になるのかご紹介します。

主な修理方法は3つ|焼抜き、締直し、底入替え

釜や鉄瓶などの鉄製品の主な修理方法は以下の3つです。

  1. 焼抜き(やきぬき)
  2. 締直し(しめなおし)
  3. 底入替え(そこいれかえ)

それぞれの修理方法について、実際の修理品を例に概要をご説明します。
どの修理方法も釜を例に紹介していますが、鉄瓶も同じように修理することが可能です。

修理方法① 焼抜き

焼抜きは、錆びてしまった釜や鉄瓶の錆を落としてきれいにし、高温で焼くことで錆びにくくする修理方法です。

焼抜き-修理前01

修理の依頼をいただいた切合せ田口釜。

この釜が乗っていた琉球風炉にもへこみがあり、釜と風炉セットで修理の依頼をいただきました。
(風炉の修理については別の機会にご紹介します。)

焼抜き-修理前02

外側はほとんど痛みがありませんが、釜の中が真っ赤に錆びてしまっています。

このような状態の釜を再び使えるようきれいにします。
中の錆を落として釜全体を800℃程度で焼くことで、鉄の表面に酸化被膜ができ錆びにくくなります。
また、高温で焼く際に釜表面の色や漆がすべてはがれてしまうので、色付けも行います。

焼抜き-修理後01

焼抜きの処理を施し、色を付け直して修理完了。

修理の際は水漏れのチェックも行い、水が漏れる箇所は鉄漆(かなうるし、鉄粉と漆を混ぜたもの)を詰めて漏れ止めをします。

焼抜き-修理後02

真っ赤に錆びていた釜の中もきれいになりました。
今回の修理ではお客様のご要望により、釜の内側には漆を塗らず、煮え金も付けていません。

修理方法② 締直し

締直しも焼抜きと同様、錆びてしまった釜や鉄瓶をきれいにして再び使えるようにする処理です。
焼抜きとの違いは実際の修理品を例にご説明します。

締直し-修理前01

修理依頼品の富士釜。

締直し-修理前02

先ほどの田口釜と同様、中が錆びてしまっています。
錆を落として焼抜きの処理をしたいところですが・・・

締直し-修理前04

こちらの富士釜、過去に修理された形跡がありました。
古い釜は、穴が開いたりして使えなくなってしまった釜の下半分を切り落とし、下半分だけ新しいものと取り換えるといった修理がされていることがあります。
(この後説明する「底入替え」です。)

釜の上と下は鉄漆で接着されていますが、鉄漆は250度以上の高温になると劣化してしまいます。
そのため、過去に底入替えがされている釜は焼抜きの前に釜の上下を分離し、焼抜きの処理をしてから再度鉄漆で接着する必要があります。
この一連の修理方法を「締直し」と呼びます。

締直し-修理後01

締直しを行った富士釜。
焼抜きと同様、色も付け直しました。

締直し-修理後02

中は漆を塗り、煮え金を付けました。

今回は外側が時代色(丁寧に使い続けることによる経年変化の色)でしたので、できるだけ色を変えずに着色しました。

今回は錆びた釜に対する締直しの例でしたが、錆びた釜以外にも締直しの修理を行うことがあります。
底入替えをした釜は上下をつないでいる鉄漆が劣化して水が漏れたり、底が外れたりすることがありますが
そのような場合でも締直しをすることで釜を使い続けることができます。

修理方法③ 底入替え

古い釜の中には、痛みが激しく、穴が開いていたり底が薄くなってしまっているものもあります。
締直しの説明でも触れましたが、そのような状態でも釜の下半分を切り落とし、下半分のみ新たに鋳造して上側に取り付けるといった修理が可能です。

底入替え-修理前01

修理依頼品の天猫釜。
水が漏れた跡があることと、底の部分が薄くなっていることから底入替えが必要と判断しました。

底入替え-修理前02

釜の下半分を切断。

底入替えの際は、基本的には修理前の釜底と同じ形状の鋳物を制作して釜の上半分に取り付けます。
しかし今回修理しているような天猫釜は例外で、元の釜底とは異なる形状で制作する場合があります。

天猫釜は元々は茶道用の釜ではなく、日常生活でお湯を沸かす鍋釜で、囲炉裏に吊ったりかまどにかけて使われていました。
それを五徳に乗せられるよう丸みのある底に入れ替えることで、茶道の炉釜として使用できるようになります。

天猫釜の底入替え修理の際は、元の底と同じ形のままにするか、茶の湯釜のように丸い底にするかお客様に確認します。
今回の修理では茶の湯釜のような丸い底にしてほしいとご要望をいただきました。

こちらの底入替え修理ですが、今まさに修理中ですのでこれ以降の写真がありません。
このあと釜の底の型を挽き、鋳物を制作していきます。
修理が完了したら続きの写真を追加します。

釜・鉄瓶の修理承ります

釜・鉄瓶の主な修理方法を簡単にまとめるとこんなイメージです。

 錆びた釜・鉄瓶の修理 ⇒ 焼抜き または 締直し

 底部分の激しい痛み ⇒ 底入替え
 (小さな穴や軽微な水漏れであれば、底入替えをせずに鉄漆で修理可能な場合もあります。)

当工房で修理する際の参考価格は以下の通りです。
割れや欠けがある場合は多少の追加費用がかかる場合があります。

  • 焼抜き 29,000円(税込)
  • 締直し 48,000円(税込)
  • 底入替え 77,000円(税込)

修理の際は修理依頼品を確認した上で御見積りいたします。
御見積り後、修理するかどうかをご判断いただいてから修理着手となります。
修理にかかる期間は、焼抜き・締直しは1ヶ月程度、底入替えは2ヶ月程度です。

当工房では、2017年の1年間だけでも300点以上の釜・鉄瓶を修理しました。
多数の修理実績がありますので、安心してお任せください。

御見積りは無料です。釜・鉄瓶の修理でお困りの際はぜひ当工房にご相談ください。
こちらのお問い合わせフォームまたはメール、FAX(0766-23-8550)でご連絡ください。

今回は修理の概要について説明しました。
次回以降の記事では、各修理について詳しく説明したいと思います。

 

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