焼抜き-修理前後比較

茶の湯釜・鉄瓶の修理【焼抜き】詳細④|錆びた鉄製品の修理

今回も焼抜きの説明の続きです。
焼抜きの説明は今回で完結です。

前回の記事

前回は焼抜き後の水漏れ箇所の鉄漆での処置をご紹介しました。
今回は最後の工程、色付けです。

釜や鉄瓶の表面には漆が塗ってありますが、前回の記事でもご説明したとおり、漆は高温になると劣化してしまいます。
800℃の高温で焼抜きされた釜は、水漏れのために詰めてあった鉄漆だけでなく、釜の表面の漆や色もはがれてしまいます。
そのため、焼抜き後には再度色付けをする必要があります。

工程4 色付け

修理_漆

色付けに使う漆。

左の黒い漆は、釜の内側に塗ります。
(今回はお客様のご要望により内側には漆を塗りませんでした。)

右側は、漆に弁柄(べんがら)という赤い顔料を加えたもの。
釜の外側に塗ります。

焼抜き-修理中09

釜の外側に色を付けます。

190℃程度に温めた釜に、弁柄を加えた漆を刷毛で塗ります。

焼抜き-修理中10
 
焼抜き-修理中11

塗った漆がムラにならないよう、表面全体に均等にのばします。

稈心箒(みごほうき、藁を束ねた箒)に水を付け、釜を温めながら漆をのばします。

焼抜き-修理中12
 

漆が均等にのびたら、約190℃で30分程度漆を乾かします。

漆が乾いたら、釜の外側の色味や艶を調整して仕上げます。

修理_色

①稈心箒
②水

③鉄漿(おはぐろ)
酢酸や酒に鉄片を長期間浸したもの。
表面にツヤを出すために使います。

④お茶、⑤タンニン酸
お茶やタンニン酸を刷きつけると、鉄と反応し黒い色に変化します。

⑥炭(黒色)、⑦弁柄(赤色)、⑧珪砂(白色)
修理前の色に近づけるよう、色味を微調整するために使います。

焼抜き-修理中13

おはぐろとお茶と何度も刷きつけ、色味を調整しながら仕上げていきます。

焼抜き-修理中14
 
焼抜き-修理中15

着色後は表面を水でふき取ります。

焼抜き-修理中16
 
焼抜き-修理後01

修理が完了した田口釜。

焼抜き-修理後02

釜の内側は、通常であれば黒い漆を塗り、煮え金を付けて仕上がりとなります。
今回は内側の漆、煮え金とも不要とのご要望でした。

焼抜き-修理後03

型持ちには外からも鉄漆を塗りましたが、漆を乾燥させて色付けすると鉄漆はあまり目立ちません。

今回まで4回にわたり焼抜きの詳細をご紹介しました。

今後、締直しや底入替えについても詳細をご紹介していく予定です。

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